京都モデル,[.kyoto]

―大学としてのトップレベルドメインレジストリによる,クリーンなインターネット空間の確立―

京都情報大学院大学・京都コンピュータ学院 統括理事長 教授 長谷川 亘

京都情報大学院大学 教授・札幌サテライト事務局長 武田 雅哉
(一般社団法人全国地域情報産業団体連合会 事務局長)

はじめに

2012年春から,トップレベルドメインとして,ICANNから地理的名称トップレベルドメインが振り分けられた。世界中から凡そ1,900を超える申請があった。「kyoto」という文字列は,国際標準化機構ISOの「ISO 3166-2: Codes for the representation of names of countries and their subdivisions Part 2: Country subdivision code」と「 JIS X 0401: 都道府県コード」などに規定されている「世界の京都」である。そのISOコードがトップレベルでドメイン化されるということは「世界の京都」がインターネット上に定義されるということでもある。京都情報大学院大学では,地元京都を代表するICT関係の大学として,[.kyoto]ドメインの管理運営事業者(レジストリ)申請を行うことに決定し,京都府知事の支持を得た。
「京都」は実在の地域であるとともに,世界有数の「ブランド」である。新しいドメイン,「.kyoto」を活用することによって,京都のブランド力をさらに強化し,京都全体の発展を齎すことが可能である。我が国において国別ドメイン[.jp]が民間営利企業の管理下にあるように,多くの国々では,トップレベルドメインは民間営利事業体がさしたるガバナンスも無く管理してきたことが大きな原因で,残念ながら本来のドメインの意味が薄れてしまう結果となった。
この機会を活かして,産官学合同の連携で制度設計を行うと,公的機関が管理する,公益性優先のクリーンドメイン樹立の成功の可能性は大きい。これは教育機関としての,拡大を続けるインターネットのアナーキーさへの対抗でもある。

1 ビジョンについて

1.1 ドメインの歴史的背景

インターネット上の「住所」であるところのドメインを管理する団体であるICANNは,アメリカ合衆国連邦政府商務省の下にある公益団体(NPO)である。インターネット上のトップレベルドメインは,本来は,対象となる団体が所属している地域やその団体の種類を示すものとして設計された。その当初からの指針に基づいて,アメリカ国内では連邦政府所管の公法人,公益法人などの各種団体は,それぞれ特有のトップレベルドメインを有しており,サーバ群も独立している。[.gov]は米国政府関係機関であり, [.mil]は軍関係, [.edu]は米国連邦政府認証の大学等教育機関である。また,[.net]はネットワーク用,[.org]は非営利組織用,[.int]は国際機関用である。一方で,民間の自由な経済活動のためには[.com]が付与され,それは特に国籍を問われることもなく,世界中で自由に利活用されている。
他方,米国からインターネットを使用する権限を付与された世界中の多くの国々,特に中国などを除く自由主義,民主主義の諸国においては,その本質的な意味が政府にあまり理解されないまま自由に開放され,先行して民間団体や営利企業がイニシアティブを取ってしまう結果となり,政府機関や公的機関でさえ,そのドメインは民間営利企業の下に管理されることとなった。
インターネットの世界的普及に伴い,政府が管理・統制する前にドメイン名が営利企業によって乱発・乱売されたことにより,ドメイン本来の趣旨が薄れてきたばかりではなく,雲散霧消しつつある。ドメインは,コンテンツの発行元を示す極めて重要な意味を持っており,これは印刷された書籍における出版社と著者を示すものに等しい。そして,Webの閲覧者にとっては,サイバー空間における自らの位置を表すものであり,閲覧者には常に「自分がどこにいるか」を意識しておくことが求められるものである(ドメインコンシャス)。
偽サイト(フィッシングやファーミング)や危険なサイトを閲覧して被害を受ける例があまりにも多いのは,インターネットが最初からアナーキーだからではなく,ドメインが持つ意味について一般ユーザがあまりにも無頓着であり過ぎるからでもある。その背景には,民間営利企業がドメインを管理し,その事業を薄利多売のビジネスモデルにした上に,本来求められるべきガバナンスをしてこなかったという事実がある。

1.2 ドメインの現状

現行のトップレベルドメインの中では,政府による信頼性を担保された意味を持つものは,上述したように,米国の政府・公共機関などに付与される「.gov」(米国政府関係機関), 「.mil」(米国軍関係機関),「.edu」(米国連邦政府認証の高等教育機関)など僅か数例であり,他の多くは,単に国や団体の種別を表す程度の機能しか果たしていない。セカンドレベルで当該国の政府機関もしくは政府認証機関を示すドメインは多種あるが,同じトップレベルドメインの下の別のセカンドレベル以下に信頼性のないサイトや違法サイト(フィッシングサイト,アダルトサイトなど)が含まれることが多いのは周知のとおりである。管理団体が民間営利企業であるトップレベルドメインは,米国政府認証機関を示すトップレベルドメインとは別次元のものと考えるべきであろう。わが国の[.jp]では,そのトップレベルドメインの下に,政府から有害サイトまで,すべてが混在しているのが現状である。
最近のインターネットブラウザでは,当該サイトの発行元であるドメインが色濃く表示されるようになっており,ドメインを意識してブラウジングするように配慮されている。これも乱脈を極めるインターネットにおいて,ドメインの本来の意味をユーザに確認させるためであろう。
我が国の[.jp]のような,ccTLD(country code Top Level Domain: 国コードトップレベルドメイン)は, ISO(国際標準化機構)のISO3166-1 リストで規定される文字の国コードを基にして各国・地域に割り当てられたトップレベルドメインである。ccTLD は,OECD加盟国の内,約20%が学術組織によって運営されてはいるものの,多くは民間営利法人が管理している。我が国においては,[.jp]ドメイン名の登録管理業務は当初はJPNIC(社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)が管理していたが,現在はJPRS(株式会社日本レジストリサービス)に移管されている。
インターネットは広域的分散ネットワークであるから,インターネット全体を集中的に維持・管理するための組織というものは存在しないと一般には理解されている。JPNICやJPRSは,レジストリ(管理運営事業者)として,日本国内においてIPアドレスやドメイン名といったインターネット上の資源の割り振り・割り当てや登録を行ってきたが,国内のインターネットのコンテンツを含むすべての管理を行っているのではない。スパムメールやクラッキング,有害コンテンツといった問題は,各ユーザが自己責任で解決しなくてはならないことが常識となっている。しかしこの「常識」は,唯に,多くのレジストリによるガバナンスの無い運営の結果に過ぎないとも言えるのである。

1.3 京都ドメインの可能性

今般,京都の名を冠したトップレベルドメインを取得し,京都府等の「公法人」と「関係公益団体・公益法人」の連合体として,「オール京都」主導で適切な制度設計を行うことにより,米国の[.gov]や[.mil]等と同様に,本来の「意味のある」トップレベルドメイン,しかも「京都のドメイン」を確立することが可能となる。適切な制度設計と管理体制を樹立することにより,様々な展開の可能性がある。現実社会の京都府に直接対応する形で「サイバースペースにおける京都府」を実現することに繋がる可能性がある。これは,人類が発明したサイバースペースという無限の空間に,同じく無限に発展し得る「サイバー京都府」を構築するということでもあるから,サイバースペースに,先行して行政機関や公的機関を構築することは,真の「産官学合同のフロンティア」出現の呼び水となり,国内外で最初の先行事例となる可能性が高い。
先行して公法人と関係公益法人がリードし,サイバースペースの京都を構築することにより,インターネット上で「(世界の)京都」のブランド化が可能となる。同時に,その「サイバー京都」の「ブランド化」を意図的に確立することにより,リアル社会における「京都」も相互補完的にブランド化が強化されるであろう。そうすれば,相互補完と相互連関を遥かに超える相互発展の可能性が出現する。
サイバースペース上の「京都」という街と,そのブランド力を適切に設計することによって成る,結果としての,実社会である京都府下のあらゆる事物・事象の「京都ブランド化」がより強調されて,両スペースをあわせ,世界で唯一の「京都ブランド」がより強靭なものとなろう。
国内の他のドメインが営利企業による多量販売のビジネスモデルであり,元来のトップレベルドメイン,セカンドレベルドメインの意義がほぼ雲散霧消してしまっている事実に比すると,これは「数よりも品質」の意義あるビジネスモデルにできる。
すなわち,不法サイト等を排したクリーンで信頼性の高いドメインを目標にすることで,拡大が進むインターネットのアナーキーさに対抗するのである。それが実現すると,国内どころか世界でトップクラスの,「公益性と信頼性の高いドメイン」であるという評価を受けることも可能であろう。本事業の本質は,オール京都がリアルスペースの制約を離れて,サイバースペースという無限の空間,新たなフロンティアの中に京都府を創っていくということにもなり得る。公法人や公的機関がリードして,それぞれの組織特性を活かしながら,成功に導くべきであろう。

1.4 先行実験

[.kyoto]では現実社会の番地と道路名などを一対一対応させることを検討している。サイバースペースに現実社会と対比する街を構築することは極めて有意義であると考えられる。リアルスペースにおける「京都」と,サイバースペース内の「京都」をほぼ一対一対応させることによって,極めて信頼性の高い状態でサイバースペース上にも真の「京都」を構築できる。それはリアル社会である「京都」の各種情報量を,莫大な規模に拡大し経済発展を齎すだろう。将来的には,他の地理的名称トップレベルドメインと提携して共同研究や関係ソフトの開発などを行うとより合理性が増すと思われる。
京都大学の石田亨教授が率いた「デジタルシティ京都」の実験を始め,世界中で3D空間のバーチャルシティを創出して,その中に経済活動を盛り込むというような実験が行われている。インターネットにおけるサイバー空間やバーチャルリアリティと,現実社会の協調に関することは,数多の先行研究がある。最近ではAR技術(Augmented Reality:オーグメンテッド・リアリティ,拡張現実)の研究も進んでいる。その中で,既に開発された技術を統合すると,インターネット上に「京都の街」を描くことは可能である。それを,[.kyoto]ドメインとそのサーバ群の中で実行すると,何が生じるかを以下に考察していく。

1.5 「.kyoto.jp 」と「.kyoto」の比較

「kyoto」 という文字列は,国際標準化機構ISOの「ISO 3166-2: Codes for the representation of names of countries and their subdivisions Part 2: Country subdivision code」と「 JIS X 0401: 都道府県コード」などに規定されている「世界の京都」である。そのISOコードがトップレベルでドメイン化されるということは「世界の京都」がインターネット上に定義されるということでもある。
まずは概念論であるが,公法人などに現在使用されている[.kyoto.jp]は,「日本の一地方都市である京都の~」,という意味である。一方,[.paris],[.london],[.nyc](ニューヨーク)などは,それ単体で街を意味し,いわば「世界のパリ」,「世界のロンドン」,「世界のニューヨーク」という意味であり,いずれも国の下位概念ではない。ボーダーレスなどと言われるように,国や国境の意味が薄れてきた一方,相対的には,府,街,市,あるいはコミュニティの意味がより強調されてくる現今,トップレベルに[.kyoto]を冠すると,他の世界都市と同様に,「世界の京都」としてサイバー空間におけるプレゼンスを訴えることができる。
 象徴論的には,[.kyoto]は,その文字列単体で「世界の京都」「京都全体」の「シンボル」となるので,そのドメイン下にある情報すべてに象徴的意味が付加される。修辞学的にも[.kyoto]の持つ意味やそこから派生する効果を考えると,後尾に[.jp]が付くことと,何もないこととは,大きな違いがあることに疑いは無い。
 次に,インターネットの情報技術的な側面では,ドメインレベルが上がる(トップレベルになる)ことは,DNS階層によるアドレス解決の処理時間短縮ともなり,ウェブやメールなどのサーバへの接続速度向上という効果を齎す。ウェブやメールなどのサーバの性能やトラフィックが同等の条件下では,トップレベルに京都を冠した方が処理が速くなる。[.jp]の下にあるということは,必ずJPRSのDNSサーバを経由することになるから,そのDNSサーバの性能や条件に依存することになり,ネットの遅延も加わる。
つまり,全く同じ京都関係のコンテンツを,[.kyoto]の下とセカンドレベルドメインの京都の下である[.kyoto.jp]の下に置いた場合,世界のどこかにいる閲覧者・ユーザにとっては,前者の方が速く表示されたり,より高速にメールが転送されるということである。トップレベルに[.kyoto]を冠すると,そのドメインには京都関係の情報しかないということになるが,トップレベルドメインである[.jp]の下のセカンドレベルには,kyoto以外にも数多くのドメインがある。さらにサードレベルになると玉石混淆で内容は混沌としており,それは検索するにも処理時間がかかるだけではなく,閲覧者にとっては真贋,良悪などの判断が難しくなる。
 現行の京都府のサイトは,[.pref.kyoto.jp]である。これは[.jp]の下にセカンドレベル,サードレベルで分類されているだけであり,同じセカンドレベル,サードレベルには[.co]や[.ne]などの下に,違法サイトに至るまで様々なものが含まれている。例えば,[***.co.jp] という有害サイトがあったとすると,それと京都府庁はドメイン分類上は,同じレベルにあるということである。
 次に構造主義的に考察する。本稿に記述される様々な企画も,他の取り組みであっても,それらは「他のドメイン下でも可能である」,「費用を比較しよう」,などといった「要素主義的」な検証や比較が可能であるが,それだけでは実はあまり差異は見えて来ない。数多の情報の中の「1セットとしてのウェブサイト」や,様々なアプリケーション,情報処理のシステムと,ドメインの関係を要素主義的に比較したところで大差はないからである。
 しかし,これを構造的に比較すると,[.kyoto]は全く異なるものになることがわかる。
まず,①様々な京都関係の情報が世界中あちこち様々なドメインに分散しているのが現状である。次に,それら京都関係の情報のうち,②京都府所管の情報だけを,行政権を発動して[.kyoto.jp]に集約した状態を仮定する。そして,第三には,③今回新しく創出される[.kyoto]の下に京都府所管の情報を集約することを仮定する。
①は現状であるが,そもそも情報が拡散しており構造体すらなしていない。情報を得るためにはコンテンツ検索しか対応できず,インターネット上に浮遊する数多の情報を順次検索していって,閲覧者は一つ一つの情報に,「たまたまそれを見つけた」というように辿り着くわけである。
②は構造体を成すが,それは巨大な[.jp]の構造の一部であり,その中には違法サイトや不法サイトまでが含まれ,京都はその一部でしかない。必要な情報を取り出すにしても,①と同様に,内容の検索しかできないので,結果は同様である。そして民間から発信される情報は[.jp]に限らず,世界中あちこち様々なドメインに分散しているまま変化はない。
 ③は,独立して構造体を成す。②に比すると,最初から京都からの情報発信という限定条件が付加されている上に,同じドメイン管理下のサーバに公的機関のすべての公開情報が掲載されるわけであるから,管理サーバ下で相互リンクの自動生成を可能ならしめたり,検索を簡便にしたり(処理速度が速い),統計処理などの分析も容易になる。また,高い信頼性を確立することができる。加えて,上述の象徴論的な意味(symbolic meaning)がそれぞれのコンテンツに相互作用的に機能するとともに,公的機関がそのドメインを主導することによって,民間発信の京都情報が追従して増加するから,さらに全体としての京都情報が相互補完的に高密度になる。
 以上のように,象徴論的観点を加味して構造的な比較をすると,[.kyoto]ドメインの重要性は明らかである。的確な行政学的観点でその制度設計を行い,そして同時に適切な情報処理技術を作用させることにより,[.kyoto]はその刹那,まさに一瞬にして巨大な京都情報の構造体を成し,全世界に向けてオール京都の情報発信を始めるのである。それまで分散し拡散していた数多の小さな灯のそれぞれが,互いに有機的連関を構成して輝度を増し,全方向にサーチライトやフラッシュライトのような閃光を放ち続けることになる。

1.6 京都ブランドの防衛

一方で万一,この[.kyoto]ドメインを京都府関係の公法人と公益法人の連合体が取得しなかった場合,いくつかの危険性が考えられる。
まずは,同名のドメインの出現の可能性である。アフリカにKyotoという街があるので,どこかの資本が背後に付いて,その名前でICANNへの申請が行われたとき,日本国内では[.tokyo],[.osaka]などの申請が行われることも鑑みると,インターネット上に「日本の京都をかたった偽物ドメイン」が出現することになってしまう可能性がある。当然のことながら悪用される可能性は高い。また,例え国内団体であろうと,過去の事例と同様に民間営利事業体がこのドメインを取得して一旦闇雲に販売してしまうと,他の多くのドメインと同様に,玉石混淆の野放図な状態になる可能性が高い。それは京都のブランドを引き下げる力学を発すること必定である。そのような状態になってしまうと,行政機関が命令したところで民間営利事業の営業権や通信権を盾に抗弁されると抹消や改善はほぼ不可能である。
その次の段階として,ICANNにおけるコンペティションに勝てるのかどうかという点から見ると,単なる民間営利事業体だけによる申請では心もとない。ICANNでの世界コンペティションにおいて勝ち抜けるかどうかという観点も重要である。

1.7 事業主体について

[.kyoto]ドメインを運営し,広く普及させることは,京都府全体の国際的な知名度・ブランド力の向上につながるものと期待される。また,それを正しく活用することによって,社会・経済の活性化にも寄与することができる。その一方で,詐欺目的サイトや公序良俗に反するサイトなどが[.kyoto]ドメインを冠するならば,京都ブランドのイメージダウンや信頼を損ねるようなことになる。これは徹底して避けなければならない。
その目的を達成するための事業の性質を考察すると,高度に公益性を担保された民間公益団体が担うのが最適である。前例の無い分野なので,国税に依拠し失策が容認されにくい公法人もしくは類似の機関(元「国立・公立」の独立行政法人等)が担うといくつか障壁が考えられる。例えば,ドメイン販売に関するポリシーの策定を公法人が司ると,公法人としての適法性・違法性にポリシー策定の根拠を求めることになるが,民間団体ならば民事の枠内でポリシーを策定することができるので,公法人ではなし得ない「民々契約に依拠した柔軟性の高い施策」が可能となる。また,同ドメイン下で京都ブランドの失墜を招くようなウェブサイトが出現した場合,(所定の手続きを経るとしても)民事契約に基づいて直ちに対処できる。公法人として実行を望むウェブサイトであっても組織構成や種々の制約の対処に時間がかかるなどの場合,民間団体であれば迅速な試行等も可能になるであろう。
最高度の倫理規範を伴う公共性・公益性とスピードの両立は,民間公益団体であればこそ実現できるという側面がある。これは極めて公共的な事業であると同時に,民活の側面,換言すれば「民営の力量」が必要な事業である。インターネットとそれを含むICT分野は,日進月歩ならぬ秒進分歩と言われるくらい進化発展の速い分野であるから,常に最先端を追い続けねばならない。そのためには,事業主体はICT専門団体である方が良い。継続して最先端のICT情報を得てそれを客観的立場で組織的に研究し実行し続ける機能も要求される。さらに,時々刻々変化する新規技術をすべてのユーザに広範に周知するための社会教育が必要である。技術関係知識の啓蒙活動から情報倫理的な側面に至るまで,事業主にはネット上での教育能力が求められる。それらの諸条件を考慮すると,本件に対しては,教育・研究機関,大学等がそのレジストリ事業主体として最も相応しいことがわかる。上に述べたように,実際に,OECD加盟国のccTLD(国別コードトップレベルドメイン)の内,20%が大学等の学術組織によって運営されていることに留意いただきたい。(参照:「ccTLDの利用実態から見るドメイン名のガバナンスの課題」http://www.jaipa.or.jp/IGF-J/2011/110721_ccTLD.pdf
さらに,教育行政学的な観点では,公法人や国立大学,国公立の研究所よりもむしろ私立大学が,このような新規事業を担うのが適切だという考え方もある。我が国の教育行政においては,明治以来現代に至るまで,先行しての試行は,私財の寄付によって設立された私学が担い,私学で成功した事例に倣って官学(国公立)はそれを拡大して制度化する,というのが通例である。(国税に依拠し国としての責任のある官学では可能な限り失敗を避けねばならないので,私財に依拠する私学にその試行を委ね,先行事例の結果によって判断するという政策である。)
京都情報大学院大学は,文部科学省認可の私立学校法人である。京都府下唯一のICT高度専門職業人育成高等教育機関・大学院であり,なおかつ,わが国最初のICT専門職大学院として2004年に開学した。小規模ながらも「京都の私立大学」である。専門職大学院にはその設置基準により「企業出身の専門家教員」が多数在籍して,研究型大学出身教員と連携して実務経験に基づく教育・研究が行われる。インターネットドメイン事業に関係した業種は様々にあるが,それらを含めたICT分野のプロフェッショナルを育成するための高度専門職業人教育機関として,京都情報大学院大学は国内最高学位を授与することができる。
京都情報大学院大学の母体である京都コンピュータ学院は,1963年の創立以来,日本最初の私立コンピュータ教育機関として50年近いICT教育実績を有し,4万人以上の卒業生をコンピュータ・ICT分野を中心とする産業界に輩出してきた。その名称に「京都」を冠した教育機関としての信頼性やブランドイメージの重要性を体現してきた歴史がある。また,京都コンピュータ学院は,インターネット黎明期からドメイン管理およびプロバイダの実績を有している。この実績に基づき,公益法人の観点から[.kyoto]ドメインの公益性,公平性,活用性を最大限に引き出したい。
京都情報大学院大学は,学校教育法第一条に規定される学校法人であり大学であるが故に,公益法人の中では最高度の公益性と遵法性が担保されている。さらに,専門職大学院は,一般の大学とは異なり,二重の第三者評価,即ち,文部科学省認証評価として「機関別認証評価」と「専門分野別認証評価」の両方が課せられている。大学が行う事業の公益性や遵法性を担保する仕組みが法政的にも組織内部的にも,最も高度に確立されている,新しいタイプの大学院である。(文部科学省の機関別認証評価と課程別認証評価については,http://portal.niad.ac.jp/library/1179798_1415.html )
以上を根拠として,その社会的責任においても,存在意義においても,京都情報大学院大学が[.kyoto]ドメインの運営主体(レジストリ:Registry)を担う責務があると考えている。
なお,本事業を本学が行うのは,第一義的には「京都ブランドの防衛」であることを強調しておきたい。そして単なる京都ブランドの防衛に留まらず,さらには理想の実現を期したいと願う次第である。これは,公益法人・日本最初のICT専門職大学院としての矜持でもある。

1.8 制度設計について

本事業では,制度設計の当初から,いわばゼロから体制を創出することが可能である。意味なく冠するトップレベルドメインではなく,意味あって冠されるトップレベルドメインにせねばならない。本来,トップレベルドメインとはそのような目的で策定されたというインターネットの原点に立ち戻って,制度設計を行いたい。
 当然のことながら,[.kyoto]ドメインのレジストリとしては,レジストラやリセラーに販売ポリシーを課すことになり,ドメイン事業者だけではなくウェブサーバやメールサーバなどの関係事業者にも一定の信頼性を求めることになる。サーバの技術的要件をしっかりと確定し高い信頼性を担保する必要がある。ICT関係の高等教育機関が公法人と連携して専門的に管理運営するのであれば,これは可能になる。法的にも倫理的にも,また技術的にも,基礎からしっかりと確立されるように制度設計を行うように,公法人のリードの下に,関係有識者で担当する委員会を組織して,厳正に対処していきたい。
 不都合なサイトや公序良俗に反するサイトが発生した場合に,直ちにそれを抹消できる権限はレジストリにある。それを教育事業に最大の重点を置く学校法人が行うからこそ,本事業の方向性が担保される。サイバースペースの京都が出現する可能性の中で生じ得る様々な側面で対応できるような,倫理規範の最大外延を守った制度設計を行いたい。それは日本最初のICT専門職大学院として本学の担うべきところである。企画や事業化を民間事業に委託し,京都の発展を期するような制度も必要であるため,それらを含めて公法人のリードや他の公益法人の協力を得ることも必要である。

2 「取り組み」について

以上のビジョンに基づいた取り組みの大前提は,[.kyoto]ドメインのブランド化である。
「『.kyoto』管理運営事業開始までに府が指定するドメイン名については,その使用を予約し,又は禁止しておくこと。また,管理運営事業開始後においても,未登録のドメイン名に関して同様とすること。」という条件,即ち,当該ドメインを京都府はじめ公法人が利用するという前提が京都府から示されている。それを実現して,最初期は京都府の関係諸機関で最低限の立ち上げを行いたい。2013年10月時点で京都府内の市区町村,外郭団体(公益法人など),公立学校等で1,720団体がある。【市区町村(38),広域振興局(4),商工会議所(8),商工会(21),福祉協議会(26),特例民法法人(642),新制度公益法人等(138),公立幼稚園(69),公立小学校(408),公立中学校(176),公立高等学校(57),その他市町村関連団体(101),文化施設他(32) 以上合計1,720】
それらの京都府関係機関のドメインシステムを見ると,法則性や統一感もなく,各々の情報はインターネット上に散乱している。それら公的機関に[.kyoto]ドメインを活用していただくと,クリーンで信頼性の高い,京都情報の強力な発信が可能となる。
以下,我々の考える取り組みの大枠を,順次記述していく。現在,我が国のドメインはすべて民間営利企業によって管理されているが,本来,ドメインシステムは公的なものなので,まさに当初から本企画のように公法人または公益団体の主導で制度設計から始められるべきであった。今般こそ,上記1,720機関が先導して利活用するようになると,公的機関の発信する公開情報自体をネットワーク化していくことが可能となるばかりか,民間からの発信情報が追従してそれを補完・拡張することになる。
トップレベルドメインを共有することにより,それぞれの有益な発信情報を自動的に相互リンク化していくなど,合理的な情報処理が可能となる。そうすると,下に述べる「取り組み」が様々に展開していくとともに,京都全体の発展を促進するだろう。[.kyoto]は,それのみで象徴的な機能を持つようになる。[.kyoto]ドメインとサーバ群は,まさに,オール京都の,京都府民の,「絆」になっていくことだろう。

2.1 京都府の公的機関・団体によるポータルサイトと住所ドメイン,府民メール

京都府はじめ公法人,関係機関,所管の公益法人等が[.kyoto]ドメインのポータルコミュニティサイトを構築することにより,そのブランド化の第一歩が始まる。今般,京都府並びに公法人の使用するサブドメインを各組織別に振り分けると,リアルスペースにおける京都の公法人,公益団体がサイバースペースのそれと表裏一体,一対一対応のものになる。
これは,[.kyoto]ドメインを取得している京都府下の公的団体のみが発信する情報だけの集約されたサイトであり,サイトの信頼性が向上すると同時に,[.kyoto]ドメインのブランド向上に寄与する。このサイトをさらにブランド化しながら拡張することにより,京都府民だけでなく,世界のインターネットユーザに対して,安心かつ適切なサービスを提供することが可能となる。京都ブランドの根幹がサイバースペースに大系を成し,そこに当初からブランド化に関する様々な手法を導入してインターネット上での「ブランドドメイン」を確立すると,民間事業体の多くは京都府や公法人に追従し,また,民間事業体が同ドメインを使用し始めると,多くの府民がそれに倣うであろう。個々の公開情報が有機的な連関を得ることになる。
また,府民に対する個々のサービスとしてのメールサーバは,京都クラウドとも呼ぶべきシステムを構築して対応するようにリードしたい。京都府民としてのメールアドレスが出現することで,京都府民の誇りも醸成されよう。

2.2 有害サイトや不法サイトを含まないクリーンなドメイン

ドメインの構築にあたって,リアル社会での京都ブランドの低下を招くような有害サイトや違法・不法サイトを完全に排除する対策を当初から策定しておくために,制度的には法曹の専門家を入れた委員会を設置してルールを定め,レジストラ,リセラー,ホスティングを行うサーバ業者には,ドメイン販売に関するポリシーを遵守させるとともに,ユーザとの契約内容も管理監督する。さらに同ドメイン下での各ユーザの使用方法やサイトコンテンツ,リンク等について各ウェブサイトの管理監督を義務付けて,違法・不法サイトとそこへのリンクを徹底排除する仕組みを構築する。違反した場合は契約の一方当事者であるレジストリとして,契約に基づいて即刻対処する。
ここに,私立の公益法人であり,しかも倫理規範とそれを担保する高度な仕組みが出来上がっている学校法人がレジストリとなるべき最大の理由がある。あるサイトの有害性,違法性,不法性などについては,常に意見や判断が分かれるものである。そのため,公法人が本事業を司ると法の下の平等の原理により,公法人ならではの複雑な手続きが必要となるが,学校法人ならば,民々契約により一方当事者の倫理規範に基づく判断で制約を加えたり契約を解除したりできる対応策をあらかじめ確立しておけば,各種対策は極めて容易になろう。
また,顧客からの営利を優先する営利法人に比すると,「収益の拡大」よりは「公益性」を重視して,現代社会の正義を希求するのが教育機関である。未来を担う子供・若者を育成する立場にある教育機関には,他のあらゆる団体よりも高度な倫理,正義が求められており,それを担保する仕組みが法制下に確立されている。いわゆる「産官学の合同」は,各組織の能力や機能,組織文化の融合にも意味があるが,このように制度的な相違によって発生する利点を活用することにも大きな意義がある。即ち,法制下の各組織特性において,学校法人であるからこそ,このような計画を実現できる。

2.3 教育機関としての取り組み

本事業は,単体で見ると,一般のレジストリ事業のひとつに過ぎないが,専門職大学院としては,より大きな枠組みの中で位置付け,ICT専門職を志す本学学生への教育の一環としてとらえている。換言すれば,「教材」として活用していく姿勢である。レジストリとしてドメインを管理するだけではなく,学生の実践ゼミなどの「実践的授業」として各種事業計画を策定して関係団体と共に実行することによって,「学生発ベンチャー」,「大学インキュベーション」等の枠組みで関連企画の事業化を実現していきたい。
具体的には,業種・業界・京都府下の地域,また各々の企画につき,その担当ゼミナールを設置する。そこでは担当教授とともに各地域・企業などから専門家をインストラクターとして招聘して,若い学生のセンスの発露を促進し,各種関連事業の企画立案から関係ソフトウェアの開発などを行いたい。京都府下の学生が誰でも受講可能な公開講座の開講も考えられる。これには大学コンソーシアム京都の協力を要請したい。
また,京都府内の教育機関(大・高・中・小・幼稚園)が活用できる,有益な「教材」としたいところである。3Dの街を創るために実際の街路や地形の調査をするのは,中学生や高校生でも参加可能であろう。サイバースペースに様々なことを加味していくことも,企画によっては小学生や幼稚園児も参加できるだろう。
勿論,ドメインはウェブサイトとともにあり,ウェブサイトはコンテンツあってのものであるから,コンテンツ系の各種団体・企業の協力を要請し,コンテンツビジネスの発展にも繋げたい。これらの推進に関しては,京都府情報産業協会の会員企業にも大いに期待するところである。
京都府下の各大学から多くの学生が参加するような,学生の街・京都ならではの企画を数多く実現したいものである。本学と他大学・企業とのコラボレーションは既に多々実績があるので(実績例は*1参照),それらの経験を基に様々な事業体制を実現する。実際に有効活用される結果を出した学生たちが,学生ベンチャーとして社会に巣立って行くことや,各地域の事業団体と連携した大学発インキュベーションが生まれることを願っている。産官学のトライアングルを成立させて,京都の発展に繋げたいものである。なお,これは多分に社会教育事業でもあるので,大学の社会貢献であると考えている。

3 構想中の企画

次に現在本学で検討中の派生的企画をいくつか例示する。ドメインのブランド化と関連制度を適切に設計することにより,[.kyoto]は単なるドメインネームというだけではなく,すべての京都関係情報を統合して象徴的に機能するので,実現し得ると確信するものである。
事業化する費用は,文部科学省や経済産業省などの省庁関係,私学助成関係など多方面に予算申請する。または,その事業化を行う民間企業を募集しても良い。あるいはLinuxのようなオープンソースソフトウェアとしてシステム開発するという方法もあろう。いずれも産官学の合同で実現できるように,公法人や関係公的機関には適切なリードをお願いしたい。

3.1 住所

上述したように,住所と対応するドメインである「バーチャル京都府」を実現するため,共同研究やソフト開発も行いたい。日本郵便配布の住所DBを活用するなどして,京都府下の住所を一定のフォーマットに従ってドメイン化し予約しておく。無論,それを使用するか否かは当該住所の各々の府民の自由であり,使用する場合はそのドメインをアクティブに設定することになる。その際,ユーザには費用支払い義務が発生するが,その効用は多くの事業体や府民に認識されよう。これをグーグルマップと連携するなどすると,郵便や宅配の地図検索にも役立つシステムなど,多種多様の可能性が考えられる。また,一時流行した「セカンドライフ」のようなバーチャルな街をリアルの街と対応させて作り,各事業所のウェブサイトやGPSと連動すると,様々な利便性が生まれる。この方向の研究では,デジタルシティや観光案内システム等,既に京都府下でも数々の先行実験があるので,それらを[.kyoto]ドメインをシンボルにして結びつければ,バーチャル京都から様々な派生的効果が生まれるだろう。
例えば,インターネットを通して京都のあるバーチャルショップを訪れて,カメラで撮影される棚に並ぶ商品を見て選んで購入する,あるいは,街角で自分の携帯電話のGPSで位置情報を送信すると,目の前の事業所のURLにリンクし,事業内容や在庫品が閲覧できる等々である。また例えば,GPSと連動したカーナビの情報も拡張する。これらはコンテンツ産業やアニメ産業の振興にも寄与するだろう。リアル京都とバーチャル京都が連動すれば,既存の技術を組み合わせるだけで,様々なことが可能となる。ドメインと現実の住所を対応させて,さらにはGPSを活用することで,可能性が大きく広がるだろう。

3.2 データマイニング

[.kyoto]ドメインとそのサーバを一元管理することにより,その下で交換される情報の統計処理や各種分析が可能となる。開発企業を公募したり,学会で呼びかけたりするなどして,広域かつ大量のデータマイニングの技術の開発と実践を行う。
例えば,「閲覧者が多いのにその管理者が気づいていない」,「実際にウェブサイトを公開していても有効活用されていない」というような事例を掘り起こし,当該事業体に自動的に告知するシステムなども実現可能となる。また,GPSと連動して,各種交通機関の合理的連携を図り,待ち行列の少ない観光地巡りを提案するなど,京都活性化の事業に関する情報公開・情報交換をすべて同一ドメインのサーバ群の下で行うことができるので,相互のリンケージや情報交換,情報分析,有機的連関の構築が極めて容易となる。
現在,ネット上のこのような膨大なデータ(ビッグデータ)を解析し,有用な法則性を見つけたり,有益な制御に繋げたりするなどの研究は,関係学会・業界でも注目されている。[.kyoto]ドメイン下のサーバ群の提供するデータは,恰好の研究対象となろう。
過去長年にわたって,京都府,京都市などの公法人,その他各種公益団体や民間団体などで,京都の観光の振興や映画資産の有効活用のための様々な企画や実験が実行され,情報も蓄積されている。ところがそれらの貴重な情報は分散しており有機的連関性に欠けることは否めない。それらの情報を一括管理することにより,重複を避け,過去の積み重ねを常に有効活用できるようにしたい。少なくとも府や市,国所管の地域振興のための各種企画は一元管理下の[.kyoto]サーバ群の中で有機的関連性を確立したいところである。これらは当初から使用するサーバとドメインを指定しておくだけでも,将来に有機的連携の可能性を残すものとなる。

3.3 京都ブランド保証システム

商標登録,サービスマークなどの各種登記,ロゴの確定,CIなど,事業体がブランドを守るための努力は様々に重ねられてきたが,実のところ,それらを確認するのは常に人間の目であるので誤認は避けられない。その対応策を講じる。
例えば,ある京野菜について,[.kyoto]ドメインのURLと連動するQRコード(バーコードなどでも良い)を振り分け,定期的にコードを書き換える。消費者が,販売店で京野菜のパッケージに印刷されたQRコードをカメラ付き携帯電話で撮影すると,[.kyoto]ドメインのURLに自動的に確認され,その京野菜がどこで誰がいつ生産したものなのか直ちに確認できる,といったアプリケーションが制作可能である。さらに,それが偽のサイトであるかどうかは,最終的にURLで確実に認証できる。これは既存の他ドメイン下でもできない訳ではないが,制度設計を十全に行った上で新ドメインにおいて実行することにより,ほぼ100%確実に偽物・贋作を排除できる。伝統工芸や各種産品などでも同様であり,無形資産や情報においても同様のことが可能となる。また,すべては民々契約に基づいているので,公法人独特の拘束にとらわれることもなく,当初から新ドメインの下での契約内容を適切に設計しておくと,既存の他のドメインのように野放図な状態にはならない。TPP(Trans-Pacific Partnership)に基づく自由貿易が進展すると,海外からの輸入品が増加し,当然のことながら贋作,偽物,紛らわしい産品が増えることだろう。その際,京都ブランドを確実に証明するためのこのようなシステムは強い力を発揮する。コンピュータが証明する,MADE IN KYOTOである。

3.4 京都文化への誇りを育成

 京都府民には日本文化のリーダーとしての誇りを育成したい。大学コンソーシアム京都の協力を得るなどして,「京都に関する知識」「京都文化」「京都府民として知っておきたいこと」などの社会教育,啓蒙をさらに強化する。ブランド化された[.kyoto]ドメインを使用すると,ユーザに邪魔にならない範囲で恒常的にそれらのリンクを示すことが可能なので,適切な仕組みを策定する。多くの京都府民が京都に対して持つそれぞれの誇りやプライドの文化的背景を的確に示すシステムを設けて,京都府社会全体への社会教育を展開したい。これこそ京都府下の大学等教育機関が連携して先導すべきものであろう。いわゆる「京都学」のさらなる発展を支援すること等は勿論のこと,ネット上の「京都に関する百科事典」のようなものを各教育機関で分散処理して構築していくような企画も実現したいところである。
また,[.kyoto]のブランドが確立され,その信頼性が担保されると,ネット上で様々な相互信頼が生まれ,集団的世代間教育も可能となる。大人・高齢者と子供との集団的交流を[.kyoto]ドメイン下で行うと,核家族化が進み,地域コミュニティが薄れていく一方の現代社会において,ネット社会の中で日本の古き良き「町内」になるようなSNSを樹立することができる。ユーザたちには,常にトップレベルドメインを確認する(ドメインコンシャス)ように教化啓蒙し,「集団としての大人・高齢者」が,ネット上の各々の子供たちに,京都府民としての誇りを持って指導や助言を行う。かつて町内会で近所の大人やお年寄りから学んだことや説教されたようなことを,ネット上に実現する。これはドメインのブランド化によって信頼性が確保できるからこそ可能となるSNSである。mixiやFacebookのように,誰でも参加できて発言も野放図で,責任の所在も曖昧なSNSではなく,しかるべき団体が選別した良心的な大人たちが情報発信者となるようにして,成りすましや犯罪を未然に防ぐようにしておく。アクセスする子供たちにはそのドメインからの発信であることを常に確認させる。それにより,京都府全体の「良心的大人の集団」が次世代や子供たちへの教育に参加する循環が生じ,集団的な世代間交流が可能となり京都府民の一体感も生まれるだろう。京都ブランドドメインが担保する高い信頼性は,ネット上での良心的京都府民コミュニティの実現になり得る。
さらに,青少年に対する有害サイトを排除する仕組みを,同ドメイン下で構築したい。市販のPCには,それぞれ独自のフィルタリングソフトが搭載されていたりするが,時々刻々変化するウェブサイトすべてに対応するには組織的対応が必要となる。それらフィルタリングソフトの開発会社と提携するなどして,小中高等学校等の青少年用PCはすべて同ドメインのサーバを通して各サイトをサーフするように設定すると,一括フィルタリングが可能となる。インターネット民主主義の一部思想から見れば多少なりとも批判はあるかもしれないが,だからといってアダルトサイトや残虐有害サイトが野放図に情報を垂れ流すのを認めるわけにはいかない。インターネットの有害サイトから子供たちを守ることに,いかほどの保護者や教育者が心労を重ねてきたか,誰しも知るところであろう。青少年用のフィルタリングを行うドメインとサーバシステムを構築すると,他府県への転用も想定できる。[.kyoto]をシンボリックに構築して,我が国最上級のクリーンで技術的に高度で信頼性の高いサーバ群を構築したいものである。京都府下のすべての小中高等学校の児童・生徒を有害サイトから守り,京都ならではの知識・知恵を育む教育インターネット体制を樹立したいと切に願う。教育委員会にも協力を要請する。

3.5 サプライチェーンマネジメント

楽天やヤフーの出品システムは,生産・在庫管理システムと完全には連動していない。そのため,在庫の無いものを受注して顧客とトラブルになる例も多いとのことである。それら産業界のそれぞれの事例を精査し,生産から在庫,流通販売などを連携させる仕組みを開発する。この仕組みは,本学が専門の一分野とする「SCM(効率的な生産・販売管理:Supply Chain Management)」の手法を用いてサーバ構築を行うことにより実現可能と考えている。[.kyoto]ドメイン下のサーバにより,京都ブランドをアピールし,京都府下全域の各種産品のきめ細かい在庫管理を行いながら,世界に販売することが目標である。異業種交流会のような対面式交流も大切であるが,ネット上での交流のマネジメントも必要である。

3.6 観光業への貢献,[.kyoto]で京都観光,GPSとの連携事業

京都は,世界遺産をはじめ有数の観光資産を有し,世界から多くの観光客を受け入れている。しかし,残念ながらその規模はパリやロンドンなどには及ばないようである。言語的な問題もあると考えられるので,多言語に対応した適切な観光案内サーバ群を構築することにより,多くの便宜を提供することができる。また,観光客の京都体験をサーバにアップしてもらい,写真やビデオなどの足跡を[.kyoto]上に残し,それらを追体験や共体験してもらうことにより,再訪や勧誘効果を狙うことができる。寺社や観光地では,デジタル(QRコードなど)朱印を発行し,[.kyoto]サーバ上や再訪時に特典を与えるなどの仕掛けを作る。市バス接近情報とGPS情報とを連携させたナビゲーションアプリを作りこんで観光客への便宜を図る等々,様々なサービスを組み合わせることができる。既にあちこちで様々なサービスが実現されたり,実験・実証されているが,ドメインやサーバが分散しており,相互の有機的関連性が全く無い。それらの貴重な資産を同じドメインの下で繋ぎ合わせ,コンテンツ同士のリンケージやコンテンツ検索ではなし得ない,巨大な情報セットを実現したいものである。

3.7 映画・アニメ産業への貢献

京都は太秦を中心に映画産業のメッカである。また,任天堂はじめゲーム開発会社や,京都アニメーションなどのアニメ産業もある。コンテンツ系の企業を[.kyoto]ドメインの下で連携させることで,その統計処理や各種分析,相互連関が可能になる。様々な情報を同一ドメイン下のサーバ群で処理することにより,コンテンツの相互補完と相乗効果が期待できる。派生的には,日本の映画・アニメは評価が高いので,世界中から映画・アニメ関係のトラフィックを京都府内に誘導できるようになり,各種インフラや関連業界の発展に寄与することになろう。

3.8 最終還元とスパイラルアップ

ドメインの販売数が一定数を超えると,それなりの利益が生じる。一般企業でいうところの純利益に当たる分については,学生の奨学金の原資や本事業の研究費に活用したい。学生への奨学金を増やして優秀な学生が増えると,本事業の研究が進む。そうすると,京都の活性化の一助となり,京都府下,ひいては我が国の発展に貢献することだろう。
本事業の関係ソフトの開発や個別の事業化に関しては,文部科学省や私学関係の予算獲得に努力するのは勿論のことである。「大学の社会貢献」「地域社会との連携」等は文部科学省サイドでも重点項目であるので,毎年度,各種企画や予算設定が為されている。[.kyoto]に関連して,特定地域や特定業界団体と連携し,文部科学省や私学関係の予算獲得を推進して,ソフト開発や各種事業化を行って地域社会に貢献したい。
本学がこの[.kyoto]ドメイン事業を担当することにより,すべての収益は「京都における教育・研究」「[.kyoto]ドメイン事業の展開」という公益事業に還元され,特定企業もしくは個人の営利になることはない。学校法人・公益法人である本学が担当することにより,多くの事象は相互作用の内にスパイラルアップを実現し,京都府民,京都社会に貢献することになろう。

4 むすび

 京都府下には,過去に数多様々な有益な実績があり,膨大な量のコンテンツがある。残念ながら各事業はそれだけで独立して他との関係性が弱いものが多く,有機的関連性はあまりないと言える。ケータイ国際フォーラムやKYOTO CMEXなど,蓄積された情報や,各アーカイブ,各種特区制度などで培われ生産された有益情報などを一括して同一ドメインのサーバ内におき,相互リンクの指定などを適切に制度設計すれば,過去の遺産・資産はすべて活きる。
 目前に散乱している幾万の真珠を一本の糸で繋ぎ合わすように,既にあるものを既にある技術を使い,[.kyoto]で繋ぐ。その作業にはしっかりとした見識に基づく制度設計も必要だが,そうすれば何が起こるかということは明らかであろう。無限に拡大し続けるサイバースペースにおける,「世界の京都」の誕生である。